小説の書き方

小説 文学 書籍

Month: April, 2012

#31 ペルソナデザイン

 広告業界の手法に「ペルソナデザイン」というものがあります。ターゲットとする消費者や顧客を、氏名、年齢、職業、居住地、趣味、生活スタイルまで事細かに想定する作業のことです。
 漠然と、「首都圏に住む主婦」というよりも「山田房江 35歳 専業主婦 三鷹市在住 夫と子供2人と生活 趣味はガーデニング」など詳細に設定した方が、広告の方向性がより具体的になるという効果があります。
 小説の登場人物の設定にも、このような「ペルソナデザイン」の手法は必要だと思います。ここを曖昧にスタートしてしまうと、最後まで登場人物の性格が曖昧なままになってしまう可能性があります。

#30 ライトノベル

 2000年以降に大きく存在感を増した小説のジャンルに「ライトノベル」があります。
ライトノベルの定義ははっきりとしないのですが、主に中高生を読者対象とし、マンガやアニメと親和性が強く、イラストが用いられる場合が多い、といった特徴があります。
 エンターテインメントと読みやすさを重視した、いわゆる純文学の対極にあるジャンルと考えるとわかりやすいと思います。
 ライトノベルというジャンルの隆盛は、小説全体にとっては素晴らしいものだと思いますが、あまり小説全体の読者に共有されているとは言えないのも事実ですし、従来の小説が特に若い読者のニーズを掴んでいなかったということの証左なのかもしれません。

#029 書店

ご存知の通り、日本の書店は今存亡の危機にあります。
2001年に2万店以上あった書店は、2009年には1万5千店と25%も減り、年間でいうと600店以上の書店がなくなったことになります。
4軒お店があったら1軒は閉店した、ということですね。
残っている書店も非常に厳しい経営状況にあります。
ただし、超大型店の出現により、床面積自体は増えているというデータもあります。
(個人的には超大型店は疲れるので苦手です…)

こうなった原因は様々ありますが、取次制度(=返品可能)と再販価格制度が大きな理由であることは間違いないです。
書店は、在庫リスクを持たない代わりに、非常に薄い利潤幅で定価で書籍を売ってきたわけです。
いまどき、定価販売でやっていける商売など存在しません。
一流ブランドでさえバーゲンをやっています。

このような末期的な書店の状況を受けて、様々な新しい試みをもった新形態の書店が各地で誕生してきています。

#028 芥川賞

芥川賞は、新人による純文学の作品に与えられる賞です。
年に2回、上期と下期に発表されます。「新人」の定義がないために、たまに既に実績のある作家が受賞することもあります。
新人賞なので、作品も未熟ですし、その作家がその後全く鳴かず飛ばずというのもありえると思います。
個人的には、その年の小説の中でベスト作品を選ぶ「小説大賞」のような賞があればいいかなと思います。
以下は、2000年以降の芥川賞受賞作です。多分ここに載っている作家を全員知っている人はほとんどいないんじゃないでしょうか。

町田康「きれぎれ」
松浦寿輝「花腐し」
青来有一「聖水」
堀江敏幸「熊の敷石」
玄侑宗久「中陰の花」
長嶋有「猛スピードで母は」
吉田修一「パーク・ライフ」
大道珠貴「しょっぱいドライブ」
吉村萬壱「ハリガネムシ」
金原ひとみ「蛇にピアス」
綿矢りさ「蹴りたい背中」
モブ・ノリオ「介護入門」
阿部和重「グランド・フィナーレ」
中村文則「土の中の子供」
絲山秋子「沖で待つ」
伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」
青山七恵「ひとり日和」
諏訪哲史「アサッテの人」
川上未映子「乳と卵」
楊逸「時が滲む朝」
津村記久子「ポトスライムの舟」
磯崎憲一郎「終の住処」
赤染晶子「乙女の密告」
朝吹真理子「きことわ」
西村賢太「苦役列車」
円城塔「道化師の蝶」
田中慎弥「共喰い」

#027 純文学

純文学とはどういうものでしょうか?
純文学論争というものがかなり昔からあり、その定義は明確には定まっていません。
こんなブログで簡単に答えが出せる問題ではないのですが、あえて簡単に言うとするならば、芸術性や文章の形式や美しさ、哲学性や高尚さに重きを置いている小説のことでしょうか。
大衆小説、商業小説の反対側に位置する小説になりますが、純文学も商業作品であることは間違いないですし、芥川賞に至っては最初から文藝春秋社の営業販促のための賞ですので、商業性を否定しているわけではありません。
純文学は必ずしもストーリーの高度な面白さや巧緻さを必要としませんし、必然的に私小説が多くなります。
村上春樹の作品は、純文学とエンターテイメントの高度に両立させた小説と言えるでしょう。

#026 人物の描写

登場人物の外見の描写は、小説では必須とされています。
プロの作家の作品であれば、登場人物が最初に出てくるシーンで、十分な説明が必ずされています。
この人物描写の文章は、読者として小説を読む場合、あまり気にとめない部分なので、読み飛ばしてしまう場所でもあります。

この人物描写の説明がない作品は、素人による小説と見なしていいと思います。
服装や顔の表情に関する描写は、想像だけではなかなか難しいと思います。
ファッション雑誌などを見て、実際の写真を見ながら説明の文章を考えるのが早道かもしれません。

#025 質より量

小説に限らず、創作行為全てにおいては、質より量と言われています。

沢山の作品を作ることで、自然と質の向上が可能となるわけです。
ですので、高い質の作品だけを書こうとするのは、取り組み方としては問題があります。
寡作であることに、いい点は何もありません。
駄作を重ねることで、自分でも気づかないうちに良作を生み出せるようになるのです。

とにかく、書いて、書いて、書いて、書きまくりましょう。

#024 導入部分

ヒット曲と言われる歌謡曲を聴いてみると
どの曲もイントロ、導入部分が非常に素晴らしいことが共通点になっています。
サビは出来不出来がありますが、イントロがよくないヒット曲はありません。

これは小説にも同じことがあてはまると思います。
導入部分は非常に重要です。
そこの出来が悪いと、読者は前に読み進む気が起きないのと、導入部分だけで全体の印象を悪く決めつけてしまうからです。

導入部分は、最重要パートという意識をもって書き進めましょう。

#023 印税

さて作家はどれくらいの収入があるのでしょうか?
そもそも作家専業で生活していけるのでしょうか?
書籍の場合、執筆料や取材経費が支払われる場合もありますが、基本的には「印税収入」が作家の唯一の収入です。
ですので執筆料を、「印税の前渡し」という形で渡す出版社もあります。
印税は、書籍の市販価格の10%が相場とされています。
最近は1,600円くらいの本が多いので、一冊売れると印税は160円です。

1万部=160万円
10万部=1600万円
100万部=1億6000万円
という感じでしょうか。

(ちなみに1万部売れる小説はなかなかありません。)
160万円といっても、執筆に4ヶ月かかっていれば、一月に直すと40万円です。
1万部の作品を年に2本書いても、年収は320万円です。
またこの印税収入の中で、取材費や執筆の経費(部屋代など)を賄わないといけません。

印税だけではなかなか厳しいので、執筆以外の露出で収入を得る作家も多いです。
結論としては、作家だけで生計を立てるのは、非常に厳しいということになります。

#022 人称と視点

小説は主に一人称か三人称で書かれます。
二人称というのもありますが、あまり一般的ではありません。

一人称はわかりやすいですが、三人称には二種類の表現があり、この二つを区別することは小説技法の基本とされています。

1)特定の人物の視点での文章
2)客観的な、神の視点での文章

1)と2)は、視点の位置が全く違います。
1)では、特定の人物が経験することや思うことしか書けませんが、2)ではあらゆる風景描写、心情描写が可能です。
1)と2)が混在する小説は、小説としては落第点となります。